フィットネス
2024年6月4日

ウォーキング、ジョギング、ランニングの違いとは?いまさら聞けない「基本のき」を専門家に聞いてみた (2/2)

ジョギングは、跳ねる感覚を身につけて前に進む力にする

――では次に、ジョギングのポイントを教えてください。

テンポと姿勢が大切なので、ウォーキングで整えてから始めます。ジョギングやランニングでは地面の反発力を使いたいので、体の上下運動は小さくしたい。つま先をつけてかかとを上げると。体も上がりますね。今度は、かかとで交互に地面をトン、トン、トン、トンと叩いてみましょう。こうすると地面の反発力が使えて、次の足が浮いているのでひざへの負担も少なくなります。

――ひざへの負担が少ないと、ケガもしにくくなりますね。

注意してほしいのは、慣れていないと“飛ぶ”と“跳ねる”を混同しがちなこと。“飛ぶ”と着地するので負担もかかるし、次の足も飛ばなくてはならない。上下運動が大きいから大変です。“跳ねる”は、ひざへの負担は上手く逃して前に進む力にするということです。この感覚を養うと、体は自然に前傾して反発力が推進力に変わります。腕は、“振る”というより、ひじでリズムをとるようにします。疲れてきて、跳ねるが飛ぶに変わってしまうようなら、ウォーキングに切り替えるとよいでしょう。

――確かに、疲れてくるとフォームも崩れやすくなります。

運動は、静止した状態に近いほど安定して行えます。わかりやすい例では、マシンで行うウェイトトレーニング。すべての関節が固定されているので、狙った筋肉が確実に鍛えられます。フリーウエイトの場合は、自分で固定する体を作って持ち上げなければなりません。走るときの動きは空中動作で安定しないので、バランスも失われやすい。だから、体の使い方はより安定した状態で、繰り返し覚え込ませること。ジョギングぐらい誰でもできると勘違いされがちだけど、思っているほど簡単ではないのです。優れたランナーは、ジョギングも上手です。

――ジョギングって実は奥が深いんですね。おしゃべりできるぐらいの速さで走っていればよいのかと思っていました。

体力や年齢など、個人差もありますが、速歩ができるようになったら、同じ速さでジョギングしてみること。スピードは変わらなくてもテンポアップするので運動強度は上がるし、バランスもとりにくくなります。また、すべてをジョギングにするよりも、ウォーキングとウォーキングの間に、同じ速度のウォークジョグをはさむようにすると、ひざや腰に負担をかけずに筋力や持久力、バランスが養われ、気持ちの上でもプレッシャーにならずにすみます。

体力や持久力に見合ったウォーキングやジョグを続ければ、ダイエットの成果も上がりやすい

――ウォーキングやジョギングを上手に取り入れると、走るために必要な筋力や持久力、バランスが無理なく身について続けやすいのですね。

自分の体力や目的に合わせて、柔軟に組み合わせるのもポイントです。たとえば、走ってダイエットもしたいという場合、使われる脂質と糖質の割合は、ウォーキングが6:4、ジョギングは5:5、ランニングでは4:6といわれています。

――同じ距離なら脂質はランニングよりもウォーキングのほうが消費されるということでしょうか。

そうです。もちろん、距離は同じでも運動している時間はだいぶ違いますよ。自分の体力以上のランニングで挫折するぐらいなら、ウォーキングやジョギングを続けたほうが成果も上がるでしょう。ケガや心臓への負担といったリスクも低くなります。ただし、汗ばむぐらいのテンポは必要です。続けていると体が慣れて効果は頭打ちになるので、体力や持久力が向上したらステップアップしましょう。

――体力や目標に合わせて、ウォーキングとジョグ、ランを使い分けるのですね。ほかにも、これだけは忘れずにということがあったら、教えてください。

水分補給です。といっても水ではなく、ミネラルの含まれているスポーツドリンクで給水してください。自覚がなくても、汗は意外にかいています。脱水症状による熱中症のリスクもあります。のどの渇きを感じた時点で飲むのでは遅いので、慣れていない人はウエストポーチなどに入れて、自宅から持って行くことが大切です。

忘れずに水分補給して、よいコンディションで行うことも、忘れてはならない「基本のき」。3つの違いやメリットがわかって、これからの練習に生かせそうです。みなさんもウォーキングから始めてみませんか。

著者プロフィール

牧野仁(まきの・ひとし)

有限会社スポーツネットワークサービス代表、Japanマラソンクラブ完走請負人。1967年東京生まれ。アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングトレーナーとして活躍。健康ジョギングからマラソン完走、レベルアップまであらゆるランニングの指導を全国各地で展開している

<Text:松本美和/Edit&Photo:丸山美紀>

1 2