フィットネス
2023年6月19日

「運動はやり過ぎると体に悪い」説は本当なのか。研究結果から考えてみる (2/2)

研究の結果は「運動量は健康リスクや死亡率に影響しない」

研究の結果、「高度な運動量」グループと「過激な運動量」グループの間には、心血管の疾患率にもすべての原因による死亡率にも有意な差はありませんでした。

約10年間の追跡調査でも「過激な運動量」グループに属する66人のうち死亡したのは2人だけ。心血管疾患が原因で死亡した人はいません。

論文著者らは過激な量の運動は心血管疾病も、あらゆる原因の死亡率も押し上げる要因にはならないと結論で述べています。

運動量を減らす理由にはならなさそう

思わずトレーニングをやり過ぎてしまう人には朗報ではないでしょうか。

もちろん、この研究で対象とされたのは運動量が心血管の健康や死亡率に及ぼす影響についてであって、オーバートレーニングによるパフォーマンスの低下や怪我のリスクなどは依然としてあります。また、人の3倍も4倍も運動したところで寿命が伸びるわけでもありません。

ただ、どれだけきつい運動をしたところで寿命が削られるわけではないと、自分に言い聞かせてもよさそう。少なくとも、健康に悪いからと運動量を減らす言い訳は使えなくなりそうです。

ちなみにオーバートレーニングに関しては「練習や筋トレのしすぎで起きる「オーバートレーニング症候群」とは。原因・症状・予防法を解説」や以下の動画でくわしく解説しています。

参考文献:
Athletes Performing Extraordinary Physical Activity (>10,000 MET∙Min/Week) at No Greater Risk of All-Cause or Cardiovascular Disease Mortality.
DeFina, L. et. al. 2019
https://www.abstractsonline.com/pp8/#!/7891/presentation/30918

Compendium of Physical Activities
https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2000/09001/Compendium_of_Physical_Activities__an_update_of.9.aspx

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
カリフォルニア在住。公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、コーチング及びスポーツ経営学修士(コンコルディア大学)、CrossFit L1 公認トレーナー、TVT高校クロスカントリー部監督、ラグナヒルズ高校野球部コーチ。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
 Facebook: https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text & Photo:角谷剛>

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