筋肉の種類と働き|筋トレやストレッチをもっと効果的にする知識 (2/2)
速筋繊維(速筋)とは
これに対して速筋繊維は、力が強く瞬間的に働くことができます。酸素を必ずしも必要とせず、糖を主なエネルギー源としているため無酸素運動でよく働く筋繊維です。また、速筋はさらに以下の2種類に分けることができます。
- 遅筋と速筋の中間的な存在である「typeⅡa型繊維」「中間筋」「ピンク筋」と呼ばれるもの
- 完全に白筋である「typeⅡb型繊維」と呼ばれるもの
速筋繊維を鍛えるには筋トレなどの無酸素運動が有効です。なお、身体の表層にあるアウターマッスルに多く見られます。
ひとつの骨格筋の中に遅筋も速筋も混在している
勘違いされがちですが、ひとつの骨格筋の中に遅筋繊維と速筋繊維のどちらかだけが存在しているわけではありません。同じ骨格筋の中に、遅筋繊維も速筋繊維も混在しているのです。そのため、混在する割合により、その骨格筋の性質が瞬発系なのか持久系なのか変わってきます。
遅筋繊維の割合が高い筋肉は、ふくらはぎの奥にある「ヒラメ筋」で87.8%。ふくらはぎの筋肉である「前脛骨筋(ぜんけいこつきん)」や、太ももの裏の筋肉である「大腿二頭筋」も遅筋繊維の割合が高くなります。
そして速筋繊維の割合が高い筋肉は、二の腕にある「上腕三頭筋」で67.5%。他にその割合が高いのは、太ももの前の筋肉である「大腿直筋」や、首の前側の筋肉である「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」などです。
筋繊維の割合は遺伝的な要素が強いため、トレーニングによって割合を変えることはできないと言われています。そのため、無酸素運動と有酸素運動の両方を行うとよいでしょう。
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筋肉の働き方による骨格筋の分類
筋肉は働き方によって、「主働筋(しゅどうきん)」「拮抗筋(きっこうきん)」と呼ばれることもあります。前述したように、筋肉は一方向にしか働きません。そのため、ほとんどの筋肉は対をなして働くことになります。
たとえば肘を曲げるときに主に関わっている筋肉は、力こぶの筋肉である「上腕二頭筋」と、腕の下側にある筋肉「上腕三頭筋」。肘を曲げるときは上腕二頭筋が縮み、上腕三頭筋が緩んで伸ばされます。このとき上腕二頭筋が主働筋、上腕三頭筋が拮抗筋です。
逆に肘を伸ばすときは上腕三頭筋が縮み、上腕二頭筋が緩んで伸ばされます。このときは上腕三頭筋が主働筋、上腕二頭筋が拮抗筋と入れ替わることになるのです。なお、緊張して身体がガチガチに固まった状態だと、どちらにも力が入って思うように動けない状態になります。
骨格筋はストレッチで伸ばす
一方向にしか骨格筋は働かないため、ストレッチして伸ばす必要があります。運動後は身体のケアを怠りがちですが、必ず行った方が良いでしょう。またセルフストレッチよりも、ペアで行うパーソナルストレッチの方が効果は上がります。
たとえば、腕を背中側の真後ろに上げてみてください。おそらく、できても60度くらいしか上げることはできない方が多いでしょう。しかし誰かに上げてもらうと、90度くらいまで上がるはずです。自分で動かせる可動域と、実際に動かせる可動域とは異なります。そのため、ペアで行った方がはるかに高い効果を得ることができるのです。
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このように、少し知識を知っているだけで、トレーニングやストレッチ効果が変わってきます。ここで取り上げた内容をもとに、効果的なトレーニングやストレッチを実践してください。
<プロフィール>
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。奇抜な理論ながらも論理的な指導で小学校・中学校・大学でバスケのヘッドコーチを行い、体力テストが市内低水準校で県大会優勝するなど選手育成を得意とする。最高戦績は全国準優勝。2019年度より旭川大学短期大学部准教授として、この理論を応用した幼児体育・健康の研究を行い北海道の子どもの体力向上を図る活動に取り組む。またパーソナルストレッチ・スポーツスタッキング・部活動改革にも取り組む。
[HP] https://mt-a.jimdo.com
<Text:赤堀達也/Photo:Getty Images>