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腰痛と決別するためには自前の“体内コルセット”を鍛えよ!┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(後編)

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 80%もの人が人生で一度は経験するという腰痛。そもそも腰痛は二足歩行で生活する人類のみが悩まされる痛みであり、ある意味人間にとって宿命ともいえる症状なのです。

 前編では腰痛とは何か、スポーツと腰痛の関係や痛みを抱えながらスポーツを継続してもいいものなのかといったスポーツと腰痛についての素朴でぶっちゃけたギモンについて、東京有明医療大学の柔道整復学科で教鞭をとる小山浩司先生にお訊きしました。

▼前編はこちら

慢性化しやすく特効薬もない「腰痛」。その原因・改善方法・メカニズムは?┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(前編) | 健康, トレーニング×スポーツ『MELOS』

 後編では、何かと厄介な腰痛を自分でコントロールし、かつ、予防する方法は果たしてあるのか。腰痛のセルフケアや予防法について引続き、小山先生にお訊きします。 

腰痛が出たときのセルフケアと早期回復法

 腰痛になってしまったら、とにかく横になって安静にするのが一番。その際、仰向きではなく横向きになり、さらに軽く足を曲げてエビのように丸まって寝るのがいいそうです。

「腰というのはそれ自体が湾曲していて、足を伸ばして仰向けに寝ころがるとそのカーブが大きくなるんです。だから腰を休めるには横向きに寝て足を曲げるのが効果的。ただし、そのとき腰を曲げすぎると、逆に背中側が伸びて負担がかかるので加減が大切です」

 また、痛みがはじまって最初の2〜3日くらいは炎症を抑えるために患部を冷やしますが、それ以降、あるいは痛みが治まってきたら、血行をよくして筋肉が伸び縮みしやすくするため、逆に温めるのが大切になるのだそう。そして腰痛には「これをやったから治った」というような、効果的な早期回復法はないといいます。

「僕個人としては、痛みを自覚する前……、たとえば重だるいなとか、疲れが溜まってきたな、と思った段階で動きをセーブするのが一番だと思いますね。病院へ行って薬を飲むとか鍼を打つとか、マッサージや電気治療などをすることもよいことです。あわせて腰痛がひどくなるのを避けるためにも、原因となる動きをやめることをお勧めします」

では、腰痛を予防する方法はある? オススメの筋トレやストレッチは?

 腰の骨というのは構造的に「ひねる」ようには作られていません。じゃあ、どうやって体をひねっているのかというと、腰の上下、胸と股関節がそれを助けているのだそう。

「肘を肩の高さにあげて肩から前後に動かしてみると、肩を前にだしたときには肩甲骨の間が伸び、反対に肩を後ろへ引くと肩甲骨が背中の中心に寄るのがわかるでしょう。肩甲骨は肋骨にくっついているので、これを動かすと胸が開き、背骨もそれに連動して動きます。ここと股関節が腰をひねる動きをサポートしているのです。ですから胸と股関節の柔軟性が低くてよく動かないと、もともとひねる動きが苦手な腰骨が自分でがんばらないといけなくなり、負担がかかってしまうのです」

 そのため胸と股関節のストレッチが、実は腰への負担を減らしてくれるというわけ。腰が痛いと、ついつい体を前や後ろへ倒して腰を伸ばしたり、まわしたりしてしまいがちですが、むしろ肩甲骨を動かして胸を開きやすくしたり、股関節のストレッチをした方が効果的なのです。

「椅子に座って足を床と水平に伸ばすと、腿裏のストレッチになります。ここの筋肉は骨盤につながっているので、腿裏が固いと骨盤が動きにくくなるんです。また、横になって片足の上に反対の足を乗せ、乗せた方の足を自分の体に引きつけるおしりの筋肉のストレッチも効果的です。こうしたストレッチはスポーツをする前後にやるといいでしょう」

「さらに腰への負担をおさえるために、スポーツ選手が取り入れているのが、体幹を鍛えるコアトレーニング。体の外側ではなく内側の筋肉、いわゆるインナーマッスルを鍛えて腰骨が必要以上に動くのを防ぎ、安定させる方法です。腰痛がひどくなったときに、病院でコルセットをつけることがありますよね。あれは外側から腰を締めつけて腹圧をあげ、腰骨の動きを制限して痛みをださないようにしているのですが、それを自分自身の筋肉でやってしまおうというわけです」

 胸と股関節を柔軟に保つことと、腰骨周りのインナーマッスルを鍛えておくことが、腰痛予防には重要なのです。そこでスポーツ選手に限らず、一般の人でも簡単にできるコアトレーニングの方法を紹介してもらいました。

「まっすぐに立って、ズボンのベルトとお腹の隙間に両手を入れて、お腹を引っ込めてみてください。イメージとしてはベルトからお腹の皮を少しだけ離す感覚。お腹をへこませるというよりも、下っ腹と鼠径部に力を入れて硬くする感じでしょうか。そして呼吸は普通に。最近はバスケットボールなど、さまざまなスポーツの現場で、普段からここを意識するように、と言われています。これ、実はけっこう難しいんですが、日常生活の中で動くときにも、常にここを意識しておくといいですよ」

 名前でいうと「腹横筋」。意識していないと普段はゆるんでいる腹横筋をうまく使えるようにすることで、体内に自前のコルセットを持つことになるのです。実際にこのトレーニングをしてエコーを取ると、腹横筋が膨らんで見える。すなわち、きちんと筋肉が厚くなって、正しく使われているということがわかるそうです。

腰痛防止のために、普段から心がけたいこと

 普段から腰痛予防のために意識しておくことは、「体重管理」「姿勢を保つこととそのためのコアトレーニング」「柔軟性をキープするためのストレッチ」。体重も腰痛には関連していて、肥満傾向にある人は腰痛も多くなるというデータがあるそうです。ですから体重管理も腰痛防止のためには重要です。また、日常的な動作や姿勢が腰に与える影響もあなどれません。

「図1は姿勢によって変化する椎間板への負担をグラフ化したものです。立ったときの椎間板への負担を100とすれば、前屈は150、さらにそこで重いものを持つのは220と2倍近い負担がかかっていることがわかります。また、立っているより座っている方が、椎間板への負担が高いというのも意外ではないでしょうか」

▲図1:姿勢による椎間板内圧の変化(※)

「一方、図2は腰の筋肉にかかる負担を表したグラフです。立っているときの負担が30で、少し背中を反らすとそれが26になる。まっすぐより少し反っている方が筋肉に負担がかからないんです。なぜなら筋肉が縮んでいるから。筋肉というのは過剰に伸ばされると痛みがでるので、やはり腰痛の原因は前かがみが大きいんですね。また、これを見ると寝る姿勢は仰向けよりも横向きの方が筋肉への負担が小さいこともわかります」

 

▲図2:姿勢による腰部内圧の変化(※)

「また、立っていたり普通に椅子に座っているより、あぐらは腰に悪いこともわかります。なぜならあぐらをかくと腰がちょっとまがって骨盤が倒れて猫背になる。身体としては楽なんですが、背中側には負担がかかる。身体はその方が楽なのに、実は負担がかかっているという皮肉な結果です」

 また、実は椅子に勢いよく座るのも、腰骨のクッションを傷めるのであまりよろしくないようです。椅子に座るときはできるだけ静かに! 背もたれに背中をぺたっとつけて、偉そうにふんぞり返った座り方。横から見ると背もたれと腰の部分に三角のスペースができるこの座り方も、腰にはよくないですよ。

 小山先生曰く。

「腰痛は、一度なってしまったら、治ったからといって安心はしないでほしい。常に爆弾を抱えているということを忘れないでください」

 一方、見方を変えれば腰痛は、自分がスポーツをしているときのフォームを見直すきっかけになるかもしれません。どちらにしても無理は禁物。「痛みがでたら、様子を見る」が鉄則です。

▼前編はこちら

慢性化しやすく特効薬もない「腰痛」。その原因・改善方法・メカニズムは?┃意外と知らない「スポーツと腰痛」の関係(前編) | 健康, トレーニング×スポーツ『MELOS』

※引用・出典:「腰痛診療ガイド」(日本医事新報社、192、図1・図2) 文献;konno S, et al:The relationship between intramuscular pressure of the paraspinal muscles and low back pain. Spine 19(19):2186-2189. 1994

[監修者プロフィール]
小山浩司(こやまこうじ)
研究分野は健康・スポーツ科学。東京有明医療大学准教授。博士(体育科学)(日本体育大学)。柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本障害者スポーツ協会公認スポーツトレーナー

<Text:岩根彰子 / Edit:アート・サプライ(京澤洋子)/ Photo:Getty Images>

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