インタビュー
2018年1月30日

人と人の出会いや絆を大切にしたイベントを作っていきたい。小杉陽太氏(後編)【元プロアスリートに学ぶ、ビジネスの決断力 #6】 (2/3)

 えーっ!? って感じです(笑)。奥さんの実家が岡山なので、ご両親には岡山に帰って家を継いでくれと言われました。しかし、ずっと決めていたことですし、人生一度きりなので、もう一回こっちで勝負をしたかった。もちろん「そんなに甘くないよ」と言う人もいましたけど、自分でやってみないと分からない。だからこそ、僕が飛び抜けた存在になって、認められるしかないなと思いました。

― 引退から起業までほとんど時間がなかったようですが、準備は大変でしたか?

 会社設立は10月からバタバタと始めて。でも、会社を作ることは以前から決めてて、資金もちゃんと貯めていましたし、数年前からそれなりに用意していたので、そんなに大変ではなかったですね。どちらかというと、これからじゃないですか。ただ、起業してから、家でご飯食べるのは月に1回とか2回なので、その辺に関しては奥さんにすごい迷惑をかけていると感じてます。

― この会社ではどのようなことをやりたいですか?

 基本的にイベント開催のほか、商品のPRなどイベント以外のことも視野に入れています。今、物を売るのは難しい時代です。対価が明確に示されていても売れない。世の中の興味が、物から体験に変わってきているんですね。たとえば、CDやDVDは売れないのに、音楽フェスなどの動員は増えている。

 さらにこれからは、人対人に変わってくると思います。テクノロジーやAIがどんどん進んでいますけど、コンピュータが絶対勝てないのは人と人の絆。たとえば、イベントというのは“人々の待ち合わせ場所”であり、消費者やファンの人が集まるコミュニティみたいなもので、そこで人と人の絆が熱量を生む。僕はこれからそういう場がすごく大事になると思うし、そのためのプラットフォームを作りたいんです。

 そのイベントも、参加者がみんなで作っていく形がおもしろいかなと。でき上がったイベントをただ渡すのではなく、それこそ企画から入って、意見を出しあって、当日はスタッフとしても働いてしまうみたいな。

― 現役時代は子ども野球教室によく行かれていたそうですね。そこで子どもたちと触れ合った影響もありますか?

 それはあると思います。年に2~3回、ここに行ってくださいと言われて参加するのですが、教室といっても一方通行なところがあって、選手と触れ合えなくて終わる子もけっこう多い。「自分がやるなら、もっとこういうふうにできるのに」という観点でずっと見てました。

 野球人口を増やしたいのであれば、野球をやっていない子にいかに興味を持ってもらうかがまず大事だと思います。野球人口が増えないと、球場の入場料とかグッズの売り上げが減るわけで、将来的には球団の経営も危なくなります。

 未来はすぐ近くに来ていると思うし、危機感はいつも感じてました。今はまだ、いろいろな協会や知人から「教えに来て」と言われて、行かせてもらっている状態ですが、のちのち自社で主催できれば、野球界への恩返しにもなると思ってます。

― 昨年12月には第1回目のイベントとして、元DeNAベイスターズの下園辰哉さんのトークショーを開催されましたね。

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