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寺田明日香選手が自筆エッセイで綴った3年4ヶ月。悲願の東京オリンピック出場までの軌跡をたどる


 2018年4月5日からスタートしたエッセイ連載『寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート~for2020~」』。2020年のオリンピック開催で連載も終了予定でしたが、2020年の開催は延期に。

 誰も予想してなかった事態に見舞われながらも懸命にトレーニングを続け、長年の夢であったオリンピック出場を実現させました。開催に賛否両論もあるなか、自身の想いも発信してきた寺田選手。本当におめでとうございます。

 そこで今回、このエッセイ連載を3年4カ月間、ともに伴走させてもらってきたMELOS編集部が、その軌跡をたどりながらまとめてみました。出場する100mハードルのレースが7月31日に迫るなか、寺田選手のスポーツへの情熱、そして家族を愛する母親としての想いなどを振り返り、読者のみなさまと共有することで寺田選手へエールを贈ろうと思います。

 今回は寺田選手ではなく、編集部にお付き合いのほど、よろしくお願いします!

7人制ラグビー時代。寺田選手がMELOSに初登場!

 エッセイ連載がスタートしたのは2018年4月ですが、実は寺田選手と編集部の出会いは、少しさかのぼります。MELOSの連載企画「子どもの頃こんな習い事してました」記事の取材が、初めての出会いとなりました。

 この記事では、寺田選手が子ども頃に習っていた「体操教室・ソフトテニス・水泳」。スポーツ以外では「公文・英語・日本舞踊」なども習っていたそうです。この数は、習い事記事の中でも多い方ですね。そして運命ともいえる小学校4年で陸上と出会います。

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 もうご存知の人たちも増えましたが、2017年時点では陸上から転向し、「7人制ラグビー」の選手であり妻&ママでもある。スポーツ界の中でも異色の経歴を持つ選手の話を聞くべく、連載エッセイがスタートしました。

 もともとは陸上競技の100mハードルが専門で、高校総体(インターハイ)3連覇、日本選手権でも3連覇という輝かしい実績を持ちながらも引退。陸上で叶わなかったオリンピック出場を7人制ラグビーで目指してしました。寺田選手にとっても初めてのエッセイ連載ということで、以下のような意気込みを書いていました。

「これからの連載では、ママとして、妻として、アスリートとして、などなどさまざまな観点から、2020年を目指していく姿を皆さんにお届けしたいと思っております! ママアスリートとしての苦労や喜び、意外な日常など、赤裸々に(!?)綴っていきますね。」(#0より)

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ママとして子どもに見せたかったこと、伝えたかったこと

 記念すべき第1回目のテーマは、これまでのアスリートが発信してきた定番のスキルアップやトレーニング方法ではなく、自身が打ち込む競技「ラグビー」は子どもの教育にどんな影響があるかでした。

「私がラグビーを始めた当初は2歳になったばかりで、お友だちに興味を持ち始め、“同じ空間で少し関わってみる”くらいの段階でした。そのような時期に、自分の母親が、いきなり誰かに思い切り倒される姿や、逆に誰かを倒しに行く姿を見て、どう思うんだろうと思ったのです」(#1より)

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 確かにスポーツといえど、ママがタックルしタックルされる姿をみた子どもは友だちにタックルしてしまうか、ドキドキしながら読んでいました。さらには「がんばる」という言葉が持つ激励と呪縛にも似た闇について、子育てとともに素直な気持ちを書いてもらいました。

「しかし、いつの間にかがんばることが当たり前になり、目的が勝つことに変わり、さらには勝ってもそれが普通になり、負け(失敗)は許されないと、年齢と経験を重ねるにつれて、自分で自分を追い詰めていっただけなのではないかと思いました」

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 このあと「子育てとコーチングの共通点」(#11)や、「アスリートの子どもは運動神経が良いいのか」(#14)など編集部の無茶ぶりにも応えていただき、類を見ないアスリートエッセイが綴られていきました。

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 ときには子どもではなく、マネージャーでもある夫の話にも言及してもらいました。アスリートとマネージャーであり、夫婦でもある2人のシチュエーションは、稀なケースですが寺田選手の想いは、世の男性陣をハッとさせる言葉でした。

「“手伝う”という言葉は、その作業が自分のものではないという思いがあるから出てしまうのであって、自分がやらなければならない仕事に対しては使わない言葉です」(#16より)

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驚きの陸上復帰宣言! ハードルにかける想い

 2018年の暮れ、7人制ラグビーでオリンピック出場を目指すアスリートが本音で綴る赤裸々エッセイもだいぶ好評となり、寺田選手が持っている人としての大きさ、優しさ、ご自身の努力以上に人を惹きつける魅力も何となくわかってきた矢先、大きな事件が起きました。

「7人制ラグビーを引退し、5年ぶりに陸上競技に復帰してオリンピック代表を目指します」

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 何と編集部だけでなく、寺田選手の周りの誰もが7人制ラグビーでオリンピック出場を果たすと思い込んでいたところ、突然の陸上復帰宣言! さらに陸上100mハードルでオリンピック出場を目指す宣言には、驚きを隠せずすぐさま本心を聞くためのインタビューをさせてもらいました。

 その後エッセイは、どうして陸上に復帰したのか、レースに参加できるのか。どのようなトレーニングからリスタートするのかなど、編集部も読者も興味津々な話を真摯に語ってくれました。そこからは、これまでも消えることのなかった「陸上への熱い想い」がたっぷりとつまっていたのです。

 半信半疑の周りをまるで置いていくかのごとく、寺田選手の動きはスピードアップしていきます。2019年4月には、自身6年ぶりとなる陸上選手としてのシーズンインを迎えます。こう書いてしまうと、「ああ、競技転向したのね~」と思うかもしれませんが、こんなキャリアパス、アスリートといえどそう簡単にできはしません! 前例もないことをやる寺田選手のクールさが半端ないと思った瞬間でした。

「ラグビーの場合は、急に姿勢を低くしたり止まったり左右に切り返すという動作があるので、走るスピードをコントロールする必要があります。100メートル以上を全力疾走する場面は、ほぼありません」

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 7人制ラグビーでの走りと、陸上での走り方の違いやトレーニング面での相乗効果などを冷静に分析しつつ、6年ぶりの復帰レースは、2019年4月7日埼玉県で開催された「平成31年度春季記録会」の「100m」でした。

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 7人制ラグビーの話だったエッセイは、完全に陸上へとシフトしていきます。そして、いよいよ2019年4月13日山梨県記録会にて、6年ぶりの100mハードル復帰戦に挑みます。その後書いてもらったのは、ベタなテーマ「ハードルと私」でした。

「スターティングのブロック合わせ、吹き流しでチラッと風の方向確認、コール前の静かになる瞬間、“On Your Marks(位置について)”の緊張感……。“真剣勝負の完全集中”というよりは、“運動会前に少し緊張しながらもワクワク”というメンタル状態でした」

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 本当に走ることも、ハードルを跳ぶことも大好きなんだなぁと感じられる内容でした。このとき、すでに高野大樹コーチを中心とした「チームあすか」もスタートしていました。

復帰後初の日本選手権&日本記録達成へ

 その後、レースへの参加条件も順調にクリアした寺田選手は、2019年6月27~30日に開催された「第103回日本陸上競技選手権大会」へ出場します。ここで成績を残せば、「世界選手権大会」も見える重要な大会でした。「チームあすか」のフィジカル、メンタル面からのサポートも安定し始め、レースに挑むコンディションは準備万端といったところでした。

「ゆるくいこうぜをコンセプトに、仲良くやっています」

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 そして日本選手権は、6年のブランクを感じさせることなく「3位」という結果を残します。この大会は、編集部も密着レポートをさせてもらいレースだけでなく、レース前後の夫や娘さんとのやり取りと、なかなか見られない貴重なシーンを写真で収めることができました。

「予選、準決勝、そして決勝。どのレースでもスタンドから大きく手を振って応援した果緒ちゃん。頑張るママの勇姿は、果緒ちゃんの瞳にしっかりと映っていました。ママー! がんばったねー!!」

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 2019年9月1日、好調さそのままに挑んだ「富士北麓ワールドトライアル2019」で、「12秒97」の日本新記録を達成します。このレースは、世界選手権(世界陸上)への出場をかけたレースでもありました。

 女子100mハードルの日本記録は、2000年に金沢イボンヌさんが出した「13秒00」。この記録は、19年間日本選手の前に立ちはだかり、オリンピックで行われる女子トラック種目では最古の記録でした。それを超えた寺田選手は、陸上界のみならず、アスリートとしての注目度も一気に高まった瞬間でした。

「ただ、ここがゴールではなくスタートだと感じています。女子100mハードルの未来に向けて自分のできることはしたい。誰かがぶち抜いた壁は、届きやすくなります。近いうちに、周りも12秒台を出すと思っています」

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 レース後のコメント。なんとも男前なセリフにしびれた人も多かったのではないでしょうか? このとき周りの人も一緒にうれしくさせてしまう、寺田選手の喜び方も印象に残っています。

世界陸上で見えた課題とオリンピックへの想い

 2019年10月5日には「世界陸上」へ出場。夫・俊一さんによる特別レポートも公開してくれました。編集部も行きたいところでしたが、何せカタールのドーハですからね。

「去年の今ごろまでは、まさか自分の妻の応援のために我が子を連れて世界陸上を観戦するとは思いもしませんでした」

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 世界を相手にした結果は、タイムも走りも次なる課題が見える結果となったようです。ドーハの街に降り立った気持ちや、レースに挑むときの気持ち、走っているときの気持ちなど、なかなかに興味深いエッセイを綴ってくれました。

「レースは予選で敗退してしまったので、次の日は切り替えて準決勝・決勝前の選手たちのウォーミングアップを見ていました。やっていることは、海外のトップ選手も日本の選手も実はあまり変わりありませんでしたが、ひとつの動作の完成度や基礎の徹底度はものすごく高いものでした」

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 寺田選手にとって激動の1年といえる2019年暮れ。MELOS編集部は、完成した新国立競技場のメディア内覧会に寺田選手に同行を依頼しました。旧国立競技場とは違うフィールドに立った寺田選手でさえ、来るオリンピックに向け気持ちが高まっているようでした。このとき、もうオリンピックはすぐそこに見えていたのです。

「現役のアスリートで参加していたのは、恐らく私だけだったのではないかと思います。貴重な機会を与えてくれたMELOS編集部のみなさんには感謝しかありません。でも、やっぱりここには選手として立ち、走り、笑顔で取材を受けたいなと思いました」

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オリンピック延期決定とアスリートにできること

 2019年12月に中国で発見されたコロナウィルス感染が、世界的に問題になり始めました。年が明けた2020年1月には、中国で感染者が爆発的に増加すると、国内でも第一例の患者が報告されます。2月にはダイヤモンド・プリンセス号での感染から、瞬く間に国内感染が広がっていきます。

 日本でも生活様式の変更、経済活動の停滞など影響が出始めると、東京オリンピックの開催是非も問われるようになってきました。そして開催延期が3月24日に正式決定してします。

「世界の情勢を見ると、あと数ヶ月後に東京でオリンピックができるという雰囲気ではなくなっていたため、延期はあり得るだろうと考えていました。延期が事実となり、『本当に延期なのね』とは思いましたが、大きく驚くことはありませんでした。今はできることをやっていけたらと思っています」

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 予想はしていたとはいえ、落ち込んでいると思いきや練習時間が取れるとか、あきらめることはないなどポジティブな話を聞いて編集部の方が、安心したことを今でも記憶しています。前代未聞のオリンピック延期。寺田選手は、この後アスリートならではのニューノーマルな生活・活動を始めます。

「あと、これは『いまスポーツにできることリレー』動画には掲載しなかったのですが、子どもと一緒に遊びながらトレーニングすることもできます。片腕につかまらせながら振り回したり、体にしがみつかせながらぐるっと回るように動かせたりすれば、自分の筋トレ&体幹トレにも、子どものバランス力向上にもつながりますね」

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 自身の練習もままならない中、インターハイも中止になり目標を見失いかけている高校生たちに向けた『日本生命 高校陸上ウィズ・アスリーツ・プロジェクト』をマラソンの大迫傑選手、短距離の桐生祥秀選手と3人で開催。高校生の気持ちを聞き、サポートする活動も始めました。

「まずは『インターハイ出場を決めた自分』に自信を持ってほしいですね。それでも辛さは消えないと思いますが、アスリートとして大人として、そこに手を差し伸べられたらいいなと思っています。もちろん、これからどうするのかは彼ら次第ですけど」

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2020年シーズンインと、さまざまな活動

 オリンピックイヤーのはずだった2020年。オリンピックが開催される予定に近い、8月23日シーズンインしました。4月や5月に予定されていた大会は、軒並み延期や中止となる中、開催されればオリンピック選考にかかわる重要なレースとなります。

「目標タイムは自分のベストタイムである12秒97以上(つまるところ、日本記録の更新です)」

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 この時期だからこそ実現したのが、寺田選手と高野コーチの対談です。スポーツのコーチといえば、鬼コーチがビシビシ鍛えるスポコン的なイメージが先行しますが、この2人は本当にコーチと選手なの? と思うほどほんわかというか、温かい空気感漂う関係性に驚かされました。ついつい「本当ですか?」とツッコミたくなるほどです。

 高野コーチは今となっては、オリンピックに寺田選手と山縣亮太選手、パラリンピックには高桑早生選手と、3人ものオリンピアンをコーチしたことになり、オリンピック後に話を聞きたい1人となっています。

「その後ハードルを跳んでもらうのですが、そのときも『上手くないなー』というのが正直な感想です。だからこそ、これなら『教えられる!』って思いました、すみません……」

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 2020年も多くのレースに出場した寺田選手。編集部から見ても成長していることを実感できるほどでした。ときには自分が1位になれなかったレースを振り返り、子どもに何を伝えたいのかも綴ってくれました。

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 ときにはアスリートでなければ知ることすらない「ドーピング検査」についてもふれてくれました。この話はスポーツ界にとっても貴重なのではないでしょうか!?

「ドーピングの検査対象になると、検査員の方からその場で“通達”があります。通達をされた後は、検査員の目の届く範囲にいなければならないため、検査終了までは検査員と行動を共にする事が義務づけられています」

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 さらにはオリンピック出場のために必要な準備も紹介してくれました。事務手続きなど、アスリートを支える人たちの活動を知ることができるのも寺田選手のエッセイならではの楽しみとなりました。

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日本新記録の更新。そして悲願だった日本選手権優勝

 2021年4月になると陸上競技もシーズンインします。今までとは重さが違う大会が開催され、1レースごとの結果がオリンピック内定に影響するシビアな状況の始まりです。コロナ禍で練習不足、トレーニング不足だという言い訳もきかないガチ勝負です。

「さまざまな経験をしたあとに走るのが楽しいと気づいて戻ってきた陸上競技の世界。結果が求められるのは当たり前ですが、自分の中の“楽しい”は絶対に忘れてはいけないと思っています」

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 そしてシーズンインした4月以降のレースで、寺田選手は次々と記録を塗り替えていきました。4月29日の「第53回織田幹雄記念国際陸上競技大会」では、自己ベスト記録&日本新記録更新となる「12秒96」で優勝すると、念願だったタイマーの前で娘さんを抱っこしたまま記念撮影を実現します。海外では見られるシーンですが、日本では数少ないシーンでした。

 続いて5月9日に新しい国立競技場で開催された「READY STEADY TOKYOー陸上競技(東京2020テストイベント)」でも1位でゴールします。タイムこそ「12秒99」と前レースを超えることはありませんでしたが、着実にオリンピック内定に近づいていきます。

「2019年に娘に言われていた『果緒もあそこ(タイマーの前)で写真撮りたい!』という言葉が瞬時によぎり、自然と娘を探して呼び寄せていました」

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 その後も躍進は続きます。6月1日「第8回木南道孝記念陸上競技大会」で1位、6月6日「布勢スプリント2021」で2位と好成績を重ねていきます。そして自身も思い入れの強い大会「第105回日本陸上競技選手権大会」が、6月24日から開催されました。この大会で寺田選手が3連覇したのが11年前。その結果は、4回目の優勝を果たします。

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 日本選手権のメダルが金メダルになってからは、2位の銀メダルをもらうと娘さんに「金がいい!」と言われていた寺田選手にとって、自身の記録も大切ですが、娘の願いを叶えられたことも大きな糧となったようです。

 日本新記録を更新しながらも、オリンピック参加標準記録である「12秒84」にあと一歩届かなかった寺田選手の内定は、7月2日のワールドランキング更新に持ち越され、その結果は文句なしの内定。子どもの頃からの念願だったオリンピック出場を決めました。

編集部から寺田明日香選手に贈るエール

 3年と4カ月、エッセイやインタビューで追いかけてきた寺田選手のオリンピック内定。その感動たるや、身体の中からうれしさが溢れ出てくる感覚になるほどでした。このエッセイのゴールでもあった出場決定、編集部の目標も1つ達成されたことになります。

 ここまで読んでいただけると、寺田選手がスポーツにも生活にも人にもどれだけ真摯に向き合っているか、ご理解いただけたと思います。寺田選手がいるとその場が明るくなります。存在感だけでなく、安心感も与えてくれる感じですね。それがレースになると一変、真剣な表情でスタート合図を待つ姿。そして弾丸のように走り出す姿に、何度も魅了されてきました。

 2021年の東京オリンピックは、延期以降さまざまな議論が飛び交い、開催中の現在でも賛否両論があります。

 そんななかで、寺田選手に私たちが願うことは、自分自身が納得のいくレースにしてほしい、ただそれだけです。

 寺田選手が公言してきた目標は、「オリンピックのファイナリストになること」。人生を懸けて打ち込んできた努力が実を結び、笑顔いっぱいの寺田選手の姿を観られることを本当に楽しみにしています!

 寺田選手のオリンピック初戦は、7月31日(土)10:45〜。ぜひ、応援しましょう。編集部も最大級のエールを贈りたいと思います。

【寺田明日香選手「女子100mハードル」のオリンピック出場予定】
◎【予選】7/31(土)10:45〜
◎【準決勝】8/1(日)19:45〜
◎【決勝】8/2(月)11:50〜

<Text & Edit:松田政紀(アート・サプライ)>

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