ウェルネスフード
フィットネス
2023年9月4日

プロテインは筋トレ後すぐの「ゴールデンタイム」じゃないと効果ない?元ボディビルダーの大学教授が解説 (8/8)

朝、昼、間食、寝る前……飲む時間帯はいつでもいい?

目的別で見たおすすめの摂取タイミングと種類を聞いてきました。ここからは、時間帯という視点からプロテインの飲み方を見ていきます。

「先述のとおり、基本は、朝・昼・夕の食事で均等にたんぱく質が摂取できるように、不足する食事があればプロテインで補うという考え方がよいと思います。間食として摂取すべきかどうかは目的により異なります。プロテインの種類としては、これも目的別のところで説明しましたが、基本的には、一般に利用されるホエイ、カゼインおよびソイプロテインのどれでもよいと思います。」(御堂先生)

時間帯で見た場合、朝食時にプロテインをとり入れるのもよいそうです。

「たんぱく質が不足しがちな朝食時にプロテインを摂取するという考え方もできます。朝・昼・夕の食事からのたんぱく質摂取量は、30~64歳の日本人男性でそれぞれ平均15.2、22.9、35.9g、同年代の女性でそれぞれ14.1、18.4、24.9gと報告されており、とくに朝食でのたんぱく質の摂取量が少ないことが分かります  25)。多くの方が朝食を軽く済ませていると思いますので、この数値は実感とも合うのではないでしょうか。先に述べたように、たんぱく質は一度に効率的に吸収できる量が20~30g程度と言われています。そのため、ひとつの方法として、軽めの朝食を摂っている人は、朝食時にプロテインを摂取すると決めてしまうのもよいと思います。」(御堂先生)

朝は食欲が湧かない、ガッツリ食べたくないという人も多そうですので、そういうときにプロテインをとり入れると丁度よさそうですね。ちなみに、朝起きていきなりプロテインを飲んでも大丈夫でしょうか?

「飲んでも問題ないと考えています。英語の朝食“breakfast”は、“夜間の断食期間を破る”という意味です。就寝時は長時間絶食状態になっているため、栄養素が不足しています。また、先に述べたように、一般に朝食におけるたんぱく質の摂取量は少ない傾向にあります。そのため、むしろ積極的に早い時間帯に摂取すればよいと思います。」(御堂先生)

朝、筋トレに励む人もいます。筋トレ前や最中に飲んだほうがよいなどはありますか?

「レジスタンス運動の直前や運動中にプロテインを飲む必要はないと考えています。レジスタンス運動の直前と直後のプロテイン摂取について、効果の違いを調べた研究がいくつかありますが、統合した解析結果からは、効果の違いは認められませんでした 1)。」(御堂先生)

最初のゴールデンタイム神話でも言われた内容ですね。

「運動中は、運動に適した状態に身体が変化しており、消化吸収しにくい状態になっていると考えられます。これらの研究に使用されていたのは吸収の早いホエイだからかもしれませんが、運動前の摂取で胃腸の調子が悪くなったという報告は見られません。そのため、運動前の摂取に問題があるわけではなさそうですが、やはり胃腸に負担のかかるリスクはあると思います。レジスタンス運動中のプロテイン摂取に関しては、そもそも不要と考えられているのか、あまり研究を見かけませんが、同様の理由で不要であると考えています。」(御堂先生)

運動中の水分補給としてプロテインを飲む人も見かけますが、胃腸のためにも避けたほうがよさそうです。

1)             Wirth J et al., J Nutr, 150, 1443-1460, 2020.
2)             Phillips SM et al. Am J Physiol, 273 (1 Pt 1), E99-107, 1997.
3)             Esmarck B et al., J Physiol, 535, 301-311, 2001.
4)             厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準」(2020年版), https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
5)             Levenhagen DK et al., Am J Physiol Endocrinol Metab, 280, E982-93, 2001.
6)             Abete I et al., Nutrition Reviews, 68, 214-231, 2010.
7)             Paoli A et al., Nutrients, 11, 719, 2019.
8)             Moore DR et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 70, 57-62, 2015.
9)             Mamerow MM et al., J Nutr, 144, 876-880, 2014.
10)           Morton RW et al. Br J Sports Med 52, 376–384, 2018.
11)           医薬基盤・健康・栄養研究所, 「健康食品」の安全性・有効性情報, ダイズ, https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail84.html
12)           Akhlaghi M et al., Adv Nutr, 8, 705-717, 2017.
13)           Dudgeon WD, J Strength Cond Res, 31,1353-1361, 2017.
14)           Hudson JL et al. Nutr Rev, 76, 461-468, 2018.
15)           Reis CEG et al., J Sci Med Sport, 24, 177-182, 2021.
16)           Candow DG et al. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 16, 233-244, 2006.
17)           Denysschen CA, J Int Soc Sports Nutr, 6, 8, 2009.
18)           Boirie Y et al. Proc Natl Acad Sci USA 94, 14930-14935, 1997.
19)           Helms ER et al., J Int Soc Sports Nutr, 11, 20, 2014.
20)           Rutherfurd SM et al., J Nutr, 145, 372-379, 2015.
21)           篠田邦彦 監修, NSCA決定版 ストレングストレーニング&コンディショニング 第4版, (有)ブックハウスHD, 2016.
22)           寺田新, スポーツ栄養学, 東京大学出版会, 2017.
23)           Staples AW et al., Med Sci Sports Exerc, 43, 1154-1161, 2010.
24)           Hulmi JJ et al., J Int Soc Sports Nutr., 12, 48.
25)         Ishikawa-Takata K et al., Geriatr Gerontol Int, 18, 723–731, 2018.

[プロフィール]
御堂直樹(みどう・なおき)
東京医療保健大学教授。1965年生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業。東北大学博士 (農学)、CSCS※。明治製菓(株)〔現 MeijiSeikaファルマ(株)〕、(株)東洋新薬、クノール食品(株)〔現 味の素食品(株)〕にて研究、商品開発、品質保証などに従事した後、2021年から現職。専門は食品学、食品加工学、食品機能学。競技として、アメリカンフットボール、ボディビルディングを経験。ボディビルディングでは、2002年日本社会人大会優勝。

<Edit:編集部>

1 2 3 4 5 6 7 8